イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)



イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)
イスラーム帝国のジハード (興亡の世界史)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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イスラームの歴史を通して、その本質をわかりやすく紹介する

イスラーム=テロリスト集団などという時代錯誤な認識は、さすがになくなったと思いたい。けれども、私たちが、イスラームを理解したいと興味をいだくきっかけというのは、テロリストの動機----彼らにそれが正しいと信じさせる信仰の本質は何なのか----を解明したいということであるのは、やむをえないところであろう。
本書で私が重要というか意外と感じた指摘は、1つには、ジハードとは本来武力闘争を指すものではまったく無く、特にマッカ(メッカ)の小宗教だった時期には迫害にあっても武力にはまったく訴えていないということである。2つめに、ムハンマドが神託を得て、預言をさずかる情景は、例えばキリストの生誕の場面などに比べて、ドラマ性がまったく感じられない。イスラームは神秘性で人をひきつけるところが皆無な、信者個人への戒律と部族などの共同体との密着からなる「生活宗教」なのだというふうに感じた。
私がこれまで良い本に出会わなかったのかもしれないが、私が知る限りでは一番読みやすいイスラーム入門書である。
イスラーム理解への入門としても最適

 現在の世界を理解する上で必須のキーワードである「イスラーム」について、特に「ジハード」概念を中心にすえて、その本質や歴史的展開について詳述する。
 イスラームがいかにしてアラビア半島で生起し、いかに展開し、世界宗教となったか。高度の普遍性と包容性を持っていたからであり、現在の一部の過激派テロはそのごく一部でしかない。世界史上に輝かしい大帝国を築き、文化・科学上にも功績を残したイスラームについての体系的な理解と知識を提供してくれる。
 イスラームというのは「なんだかよくわからない変わった宗教」などという偏見では21世紀の世界で生きていくことはできない。21世紀の世界を考え、生きていくヒントを得る上で、本書は必要な一冊であるといえる。 
 図版も充実しており、なじみの薄い人名も略歴・紹介がつけられている。

 新構想の「興亡の世界史」第1回配本にふさわしい充実の出来の一冊である。
一歩近づいたイスラ?ム社会

世界人口の5分の一強(13?14億人)、
国の数にして57ヶ国(3分の一弱)を占めるイスラ?ム世界。
最近でこそ連日のように新聞やテレビで報道されるようになっていますが、
それはテロや紛争に関連した情報が中心で、
この社会については、まだまだ知らないことが多く、謎めいた地域です。

この本を読み解く上でのキ?ワ?ドは、
「ウンマ」(=共同体)、
「ウラマ?」(=イスラ-ム学者としての社会集団)。
この本の随所に出てきます。

それとともに、このタイトルにもなっている「ジハ?ド」です。
私たちはややもすると、「ジハ?ド=聖戦」ととらえがちですが、
著者はその短絡的なとらえ方に異を唱えます。
もともとジハ?ドとは、信仰の初期段階では「信仰のための奮闘努力」ということであり、
戦闘の意味は全くなかったそうです。
それが、その後イスラ?ム社会の形成過程で、
「社会的ジハ?ド」「内面のジハ?ド」「剣のジハ?ド」
の三つの側面を持つようになったとのことです。

著者の言葉を借りると、そもそもイスラ?ムとは、
<宗教を基本に社会を作る原理>(宗教と社会、宗教と国家を統合しようとする教え)
であり、その根本は、「包摂の原理」。
他の宗教共同体をも包摂するものだと考えます
(いわゆる「力」だけではない)。

そして結論として、今日のテロと反テロとの相克=暴力の連鎖を乗り越え、
21世紀を眺望するうえで、
中道派の中に広がりつつ草の根のイスラ?ム復興運動に注目します。
そんな思いを込めながら、著者はこう結びます。
 
 「イスラ?ム帝国の歴史を学び、そこにおけるジハ?ドがもともと社会建設の一環を
  なしていたことを理解するならば、そして、現在の中道派も、そのようなものとして、
   ジハ?ドを再構築しようとしていることを知るならば、その理解から対話の糸口へと
  道をつなげることも可能なのではないだろうか。」
 
この本を読み終え、異文化理解という点でイスラム社会が一歩近づいたような感じです。
現代世界を理解する材料を与えてくれる良書

イスラームの歴史を,その誕生からアフガン戦争,9/11事件まで,「ジハード」をキーワードに解説しています.「聖戦」と訳されるジハードの本来の意味は,公正な社会実現のための「奮闘努力」であり,必ずしも武力(剣のジハード)を意味するのではなく,自らの内面の悪を正す「内面のジハード」という面が重要であるということがまず述べられます.著者の長年の研究成果をもとに,教科書的な知識を丁寧に復習しながら,著者独自の視点も交えて詳しく,しかし一般の読者にもわかりやすくイスラームの歴史,現状を論じています.

通読すると,イスラーム世界を軸として世界史を見通しよく再構築できると同時に,スンニ派/シーア派の違いといった基礎知識にとどまらず,なぜウサーマ・ビン・ラディンはあのような手段に出るのか,パレスチナ問題は今後どう展開するのか,テロ社会はどうしたら解決できるかなど,現実の問題を自ら考えるための数々の手がかりが得られます.単に知識欲を充たすだけでなく,現代の世界情勢をバランスよく考える材料を与えてくれるという意味で,一読,熟読に値する良書です.
イスラム理解への一助として

 イスラム、というのは日本人にとって最も理解の難しい宗教・事象のひとつではないでしょうか?
 一般に、厳格な戒律を持ち、女性の地位が軽視され、お酒も飲めない(?)のに、なぜ世界中で多くの人々が深く帰依しているのか?
 また、なぜイスラムは宗教が国家の上位に位置するような、西側から見れば「時代錯誤」とも思えるような体制を取りうるのか?

 これらの疑問に明確な答えが見いだせないと、安直に「イスラムはファナティックな宗教で、理解不能」というレッテルを貼ってしまいたくなります。

 で、本書ですが。
 イスラムの草創から世界規模(あくまで、「帝国」と称せられる規模、ということですが)の版土を得るまでが詳細に記され、中でも「ジハード」が現在意味する「聖戦」というだけではなく、「自己の内面との戦い」までも含む幅広い意味の言葉であることを繰り返し述べています。また、分かりにくいスンニ派とシーア派の軋轢についてもその起源を解説しています。
 そして、現在の「イスラムは怖い」的な雰囲気を作り出しているのはあくまでも少数の急進派・過激派であって、多くのイスラムは過去の帝国が多民族・多宗教国家であったのと同様に、他者と共存可能な穏健派であることも、説いています。

 ただそれでも、なぜ現代においてイスラムだけがこれほど深く政治に容喙し、人々のこころを動かすことができるのか、たとえそれが「一部」の者であるにしても・・・という疑問は氷解しません。
 おそらく、多年にわたり無名有名多くの人が作り上げたイスラムの歴史は、1冊の本では理解することは難しいのでしょう。筆者の独断でもいいから、現在のイスラムにもっと深く切れ込んだ考察を入れて欲しかった、あと、他の巻に譲るのでというのはあってもオスマントルコについてもう少し触れて欲しかったという気はしますが。
 イスラムを理解するための、基本的事項を学ぶための本、と考えれば、よくまとまっていると言えるのではないでしょうか。



講談社
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